BMWの車検や定期的なメンテナンス、ブレーキの警告灯が点灯などのタイミングで交換しなければならなくなるブレーキパッドとディスクローター・・・。
「なんとか安くブレーキパッドとディスクローターを交換することができないか?」
いろいろ調べてみると、BMW(Z4)の場合、ブレーキパッド&ローター(スリット入り)のセット(DIXCEL、フロント左右)が約23000円で購入できることが判明!
そこで今回は、BMWのブレーキパッド&ディスクローターの交換作業について、ブレーキパッドやローターの購入方法から、必要となる工具の紹介、そして具体的な作業手順について詳しく説明していきます。
ブレーキパッドやローターは自分で交換しても良いのか?
具体的な作業の説明に入る前に、ふと疑問に思ったことがありました。
「ブレーキパッドやローターは、自分で交換してしまってもいいものなのか?」
このことを正しく理解するためには、該当する作業が法律上どのような取り扱いをされているかということを知っておく必要があります。
まず、ディスクローターの交換作業は、「道路運送車両法施行規則」の中の「分解整備」に該当します。
第三条 法第四十九条第二項 の分解整備とは、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
(中略)
五 制動装置のマスタ・シリンダ、バルブ類、ホース、パイプ、倍力装置、ブレーキ・チャンバ、ブレーキ・ドラム(二輪の小型自動車のブレーキ・ドラムを除く。)若しくはディスク・ブレーキのキャリパを取り外し、又は二輪の小型自動車のブレーキ・ライニングを交換するためにブレーキ・シューを取り外して行う自動車の整備又は改造
引用)道路運送車両法施行規則
では、この分解整備というのは誰が行うべきなのかというと、こちらの記事が参考になると思います。
自動車の使用者本人が上記の分解整備を行った場合は、点検整備記録簿に記入し、2年間保存しなければなりません(道路運送車両法第49条2、自動車点検基準第4条2)。以前は、使用者本人が分解整備をしたときは、国の検査場での分解整備検査が義務付けられていましたが、平成10年に廃止になりました。
分解整備も、前ページの定期点検同様、使用者本人で分解整備ができる人は少数派でしょう。そこで分解整備も委託することができます。委託する際は、必ず分解整備事業者(認証整備工場や指定整備工場)に委託してください。分解整備事業者以外が他人の車の分解整備を行うことはできません。
ディスクパッド交換のページでもふれましたが、分解整備は安全上重要な部分の整備です。十分な知識・技術のある方は自分で行ってもかまいませんが、自信のない方は分解整備事業者に委託することを管理人としてはお勧めします。
引用)分解整備の定義|ちょっと得するかも?
このように他人の車を整備する(お金の受け渡しの有無は関係なし)場合は自動車整備士という資格が必要となります(責任問題があるため)が、自分の車を自分で整備する場合は特に資格がなくてもOKということ。
良く考えてみると、ユーザー車検といって、自分で法定点検及び必要整備をして、陸運局で車検を通している人はたくさんいますし、そういった人達は車検に通すために必要な分解整備を自分自身の手で行っているわけです。
ですから、「自分の車を自分で分解整備する」という点については、自己責任で行う分にはOKで、自分で責任が持てない(知識やノウハウがない、自信がない)場合は、有資格者(車屋さん)などに分解整備をお願いするという判断になるのだと考えておきましょう。
なお、ブレーキパッドの交換作業後、その内容を記録に残してく必要はありませんが、例えば車検や法定点検などのタイミングでパッド交換を行った場合であれば、点検整備記録簿にブレーキパッド残量などを記載する欄がありますので、そこにディスクパットの残り厚さを記載していのがいいでしょう。
ブレーキパッド作業可否のポイント
- ブレーキパッドの交換は「分解整備」となる
- 整備士の資格がない人が、他人の車のブレーキパッド交換は法律で禁止されている
- 自分の車であれば法律的には禁止されておらず、自己責任となる(ユーザー車検の考え方)
- 経験などがあり、自分で責任が持てる人以外はDIY交換は避け、有資格者(業者)に依頼する
ブレーキパッドとディスクローター交換に必要なもの
ここからは、ブレーキパッドとディスクローターを交換するために必要なものについてお話していきます。
ブレーキパッド&ローター
まずはじめにお話しておきたいのは、ブレーキパッドとローターをどうやって購入するかと言うことです。
私の場合、自動車整備のプロではないため、どうやって車に合った型番のブレーキパッドとローターを手に入れるかということが課題になっていたのですが、最近はネットショップなどある問い合わせフォームから、自分の車の型式や年式を記載して問い合わせることで、自分の車に合った部品を取り寄せることができます。
ちなみに今回は使ったのはこの部品です。
出典)BMW Z4 E85 E86 BT22 BT25 BU25 リアスリットローター&パッド|ヤフオク!
フロントブレーキとディスクローター(スリット入り)のフロント左右2本分セットで約23000円でした。
大切なことは、事前に適合を確認しておくということです。
今回はヤフオクでの購入でしたが、事前の問い合わせで自分の車に適合していることがわかりました。
この時点でブレーキパッドとディスクローターの注文を行い、注文してから約3日後、ダンボールに梱包されたブレーキパッドとディスクローターが届きました。
このような手順(適合確認)をしっかりとやっていけば、自分の車に合ったパーツを確実に手に入れられますので、パーツの取り寄せ方の参考にしてみてください。
タイヤ交換に使う車載道具
ブレーキパッドとディスクローターを交換するためには、タイヤを取り外す必要があります。
タイヤ交換するために必要なジャッキとトルクレンチ(車載工具などで可)を1セット準備しておきましょう。
六角レンチ(7mm、6mm)
ブレーキパッドを交換するためには、7mmの六角レンチを使ってブレーキキャリパーの固定ボルトを緩める必要があります。
一般的に7mmの六角レンチは余り見かけないものなので、大きめのホームセンターや工具専門店などに行って購入しておきましょう。
また、ディスクローターを取り外す際に、6mmの六角ボルトを緩める必要があります。
6mmの六角レンチか、6mmの電動ドライバのソケットなどを準備しておきましょう。
メガネレンチ(16mm)
ブレーキのマウンティングブラケットを取り外すためには、16mmのメガネレンチが必要になります。
プライヤー
新品のブレーキパッドは、これまで使っていた磨り減ったブレーキパッドより厚みがあるため、それを装着するには事前に前に出たピストンを押し戻しておく必要があります。
本来であれば、専用の工具「ディスクブレーキピストンツール」を使うのですが、プライヤーで代用することができます。
今回は、自宅にあったプライヤーとピストンに傷をつけないようにするために軍手をを使ってこんな感じでピストンの押し戻しを行いました。
専用のピストンツールもそんなに高価なものではなく、ネットで約3000円程度で購入できますので、予算に余裕のある人はピストンツールを購入しておきましょう。
キッチンペーパー
先ほどのページでお話したブレーキのピストンを押し戻すという作業を行うと、ブレーキフルードがリザーバータンクから溢れ出す場合があります。
ブレーキフルードはボディの塗装面などに付着すると、塗装をブヨブヨにやわらかく溶かしてしまいます。
そこで役に立つのがキッチンペーパーです。
こんな感じでキッチンペーパーをリザーバータンクの上にさしておけば、リザーバータンクからあふれ出そうになっているブレーキフルードを吸い取ってくれ、ブレーキフルードでエンジンルーム内の塗装面を汚す心配がなくなります。
パッドグリス
パッドグリスは、ブレーキを踏み込んだ時にキィー・・・と音がするブレーキの鳴きを防止するため、ブレーキパッドとキャリパーなどが接触する面(当たり面)にグリスを塗布します。
今回使ったパッドグリスは、ブレーキパッドとディスクローターを購入した時にセットになっていたものです。
パッドグリスの代わりに、耐熱温度の高いカッパーコンパウンド(銅グリス)などを用いてもOKです。
なお、シリコングリスなどを使ってしまうと、ブレーキの熱ですぐに溶けて流れていってしまい、ブレーキが鳴いてしまいますので、必ず耐熱温度が高いパッドグリスやカッパーコンパウンドなどを使うようにしてください。
ブレーキパッド&ディスクローターの交換手順
ここからは、ブレーキパッド&ディスクローターの具体的な交換手順についてお話していきます。
車をジャッキアップしタイヤを取り外す
まず車載工具&ジャッキを使ってタイヤを取り外していきましょう。
輸入車のタイヤ着脱の方法については、こちらの記事が参考になると思います。
金具を取り外す
次に、ブレーキキャリパーに付いている金具を取り外していきます。
マイナスドライバーをうまく使いながら、こんな感じで取り外していきましょう。
パッドセンサーを取り外す
パッドセンサーがついている場合、ブレーキパッド交換の時に邪魔になるので、この段階でブレーキパッドから取り外していきます。
パッドセンサーはブレーキパッドに付いていて、ブレーキキャリパーの隙間から、パッドセンサーの根本にある金具を掴んで引き抜けば、簡単に取り外すことができます。
今回はブレーキ警告灯が点灯してのブレーキパッド交換ではなく、単なる定期交換なので、センサーはそのまま再利用していきます。
パッドセンサーの配線を引っ張ってしまうと断線してしまう可能性がありますので、必ずパッドセンサー根元部にある金具部分を引っ張るようにしていきましょう。
キャリパーの後ろの六角ボルト(7mm、2ヶ所)を緩める
次は、キャリパーの後ろにある六角ボルトを緩めていきましょう。
まず、六角ボルトをカバーしているプラスチック製のカバーを取り外していきます。
すると、六角ボルト(7mm)が見えてきますので、六角レンチを使って2箇所とも緩めていきましょう。
ブレーキキャリパーとブレーキパッドを取り外す
2箇所とも六角ボルトを取り外すことができたら、マイナスドライバー等を使いながらこんな感じでブレーキキャリパーを取り外すことができます。
ブレーキキャリパーにはディスクローター裏側のパットが一緒にくっついて外れてきます。
なお、表側のブレーキパッドも簡単に取り外すことができます。
ブレーキキャリパーは結構重たいものですので、そのままブレーキホースでぶら下げているとブレーキホースに負荷がかかります。
適当な紐などでサスペンションに吊り下げておくなど、うまくブレーキホースに負荷がかからないような工夫をしておきましょう。
これでブレーキパッドを取り外すことができました。
マウンティングブラケットを取り外す
次は、マウンティングブラケットという金具を取り外していきましょう。
ディスクローターの裏側を覗き込むと、16mmボルトが2本見えてきます。
16mmのメガネレンチを使ってそれらを取り外すと、マウンティングブラケットが外れます。
これでようやくディスクローターの周りがスッキリしましたね。
ディスクローターを取り外す
ここからは、ディスクローターを取り外していきます。
BMWのディスクローターは、5mmの六角ボルトを緩めるだけで、簡単に取り外しができるようになっています。
ここがようやく作業の折り返し地点で、次からは新品のディスクローターやブレーキパットを取り付けていくことになります。
ここまでくれば後はもう一息ですので、頑張っていきましょう。
新品のディスクローターを取り付ける
新品のディスクローターを取り付ける方法は簡単です。
ディスクローターをセンターハブのところに挿入し、先程の六角ボルト(5mm)を締め付けるだけ。
あっという間にブレーキローターの取り付けは完了です。
マウンティングブラケットを取り付ける
次は先ほど外したマウンティングブラケットを取り付けていきます。
マウンティングブラケットも16mmのボルトを2本で固定していきます。
ブレーキの際に大きな力がかかる場所なので、しっかりと規定トルクで締め付けて起きましょう。
ブレーキキャリパーの前に出っ張っているピストンを押し込む
ディスクブレーキは、ピストンでブレーキパッドをディスクに押し付けることによって作動します。
参考までに、ブレーキの構造がよくわかる概略図を紹介しておきます。
ブレーキペダルを踏むと、ブレーキキャリパーに組み込まれているブレーキパッドが、タイヤと一緒に回転しているディスクローターを両側から押さえ込むことでタイヤの回転を落し、車が止まります。
古いブレーキパッドは磨り減って薄い状態で使用されていたため、現状のままだとピストンと呼ばれる円筒上の金属部品が前に出っ張った状態になっています。
新品のブレーキパッドを取り付けるためには、事前にこのピストンを押し込んでおかないといけません。
今回は、あり物のプライヤーと軍手(ピストン保護)を使ってピストンを押し込みました。
ピストンを押し戻す作業は結構な力が要りますので大変な作業ですが、あまりにも頑張って力を入れすぎるとピストンに傷が付いてしまったりすることもあるので、少しずつ慎重にピストンを押し戻していきましょう。
新品のブレーキパッドにグリスを塗布する
ここからは新品のブレーキパッドを取り付ける前に、輸入車に多いブレーキパッドの鳴き予防のために、ブレーキパッドの裏側やキャリパー&マウンティングブラケットの当たり面にグリスを塗布しておきましょう。
基本的にグリスは薄く塗布すればOKで、グリスを塗り終わったらブレーキパッドをマウンティングブラケットにセットしていきます。
注意点としては、ディスクローターにグリスが付かない様にすること。
もしブレーキパッドの表面(ディスクローターに接触するところ)にグリスがついてしまったら、ブレーキが効きにくくなってしまいますので、付着したグリスは布とパーツクリーナーなどを使って、きれいにふき取っておきましょう。
新品のブレーキパッドを取り付ける
ここからは、新品のブレーキパッドを取り付けていく工程です。
もともと取り付けてあった様にマウンティングブラケットの溝にブレーキパッドの突起部を上手くはめ込んでいきましょう。
裏側のブレーキパッドは、キャリパーのピストンに押し込む形で取り付けておきます。
ブレーキキャリパーを元に戻す
次は、ブレーキキャリパーを元に戻していきます。
こんな感じで横からキャリパーをスライドさせていきましょう。
後は、ブレーキキャリパーを固定する六角ボルト(2本)を元通りに規定トルクで締め付けておきます。
パッドセンサーを取り付ける
ブレーキキャリパーをもとに戻せたら、最初の方に取り外しておいたパッドセンサーをブレーキパッドに差し込んで取り付けておきます。
ちなみに、ブレーキ警告灯などが点灯したのでブレーキパッドを交換したという場合、パッドセンサーも交換する必要があります。
パッドセンサーを交換する場合は、ホイールハウス内にあるプラスチック製の箱のところでセンサーの接続を取り外すことができますので、ご参考まで。
こんな感じでパッドセンサーは簡単に取り外せますので、予算に余裕のある人はパッドセンサーも交換しておきましょう。
金具を取り付ける
ブレーキキャリパーに付いていた金具も、忘れずに取り付けておきましょう。
ブレーキフルードの量を確認する
ブレーキパッドやディスクローターを交換した後は、ブレーキパッドの厚みが増す分、ピストンが押し戻され、ブレーキフルードが規定量(MAX)より増えてしまう場合があります。
一番最初にブレーキフルードのリザーバータンクにキッチンペーパーを置いておいたのは、それによってブレーキフルードがリザーバータンクからあふれ出ないようにするためでしたよね。
ここで一度、ブレーキフルードの量が規定値の中に納まっているか、確認していきます。
まずはじめに、エンジンをONし、ブレーキを2~3度、奥までしっかりと踏み込みます。
その後、エンジンを止め、ブレーキフルードが規定レベルに収まっているか確認してみましょう。
今回の場合、ブレーキパッドもあまり減っていなかったこともあり、ブレーキフルードの量は若干増えた程度で、特に調整をする必要はありませんでした。
ピストンを押し戻す量が多い場合、リザーバタンクのブレーキフルードが溜まってしまっている事がありますので、ブレーキフルードが既定量より多く入っている場合は、スポイトなどを使って規定量に収まるように調整しておきましょう。
ブレーキパッド&ローター交換をプロに依頼すべきか?
自分ではブレーキパッドやローターを交換する自信がない場合、近くのディーラーや整備工場などに交換の依頼をすることをおすすめします。
正確にパッド残量を測定したら、次の車検のタイミングの交換でもOKだったり、ブレーキローターの場合、表面を研磨することによってローターの再利用が可能というケースもあったりします。
このあたりの細かなノウハウについては、素人には分からないことが多いことと思います。
プロからいろんなノウハウを教えてもらうためにも、一度プロに交換をお願いして、可能であれば作業風景を見せてもらうといいと思います。
この記事の説明はなるべく分かりやすく書いたつもりですが、でも実際に作業をしているところを見たほうが絶対わかりやすいですし、そこ場でわからないことを聞いたりすることもできます。
この作業を行う前に、ぜひ一度はプロの作業風景を見てみてくださいね。
最後に一言
今回は、BMWのブレーキパッドとローターを交換する方法についてお話しました。
ブレーキパッドやブレーキローターの交換は2~3時間程時間がかかりますが、作業自体はそこまで難しいものではありません。
特に1度やってしまえば、2度目以降はチャチャッとできるようになると思います。
注意してもらいたいことは、ブレーキ交換後は「一度ゆっくりと動き出してはブレーキ」という感じでブレーキの効きを確かめてもらいたいという点です。
作業自体は簡単なので間違うことはないと思いますが、万が一、何か異変があった場合にすぐに停車できるスピードで試運転をすることが最も重要です。
作業が簡単だからと言って、自分が行った作業の結果を検証せずにいきなり速いスピードで走り出すなんてことは絶対にやめましょう。
なお、自分でブレーキパッド&ローターを交換することに対して自信がない場合、車検などのタイミングでプロに交換してもらったほうがいいと思います。
安全、安心して車に乗るためにも、決して無理はしないでくださいね。
それでは!