夏が近づいてきて久しぶりに車のエアコンをつけてみたものの、車のエアコンが効かず車内が冷えない・・・
いろいろ調べてみた結果、カーエアコンの送風口から冷たい風が出ていないという場合、それはカーエアコンの故障が考えられます。
カーエアコンは家庭用のエアコンと違って、年に数グラムずつ、配管の継ぎ目などから冷媒が漏れ出してしまう構造になっている(製造上の問題)ため、新車購入から5年以上経過してくると、だんだんとエアコンの効きが悪くなってくることがあります。
一般的には、減ってしまった分の冷媒ガスを補充してあげれば、また元のように送風口から冷え冷えの空気が吹き出されてきます。
ただ、エアコン故障の原因が冷媒ガスの不足ではなかった場合に、間違って更に冷媒ガスを補充してしまうと配管内のガス圧が異常に高くなってしまい、最悪の場合、圧縮器などの部品が故障してしまうこともあります。
そこで今回は、自分でも簡単に、かつ安い道具(約2000円)を使ってカーエアコンの冷媒ガスが不足しているかどうかを判定する方法についてお話していきます。
冷媒ガスの再充填と補充の違いについて
まずはじめに知っておきたいこととして、通常、業者にカーエアコンのガス補充を依頼した場合、減ってしまった分のガスを補充するのではなく、専用の機械(冷媒回収、充填装置)を使って、一旦カーエアコン内にある冷媒ガスを全て抜き取ります。
その後、冷媒ガスを規定量(車のボンネット等に表示されている数値)の分だけ充填し直すという再充填方式で作業が行われます。
この方法であれば、現状、カーエアコンの中にどれだけの冷媒ガスが入っているのかが分からなくても、確実に規定量の冷媒ガスを充填することが出来るため、作業ミス(クレームのリスク)を減らすことができます。
ただ、上記のような作業を行うためには、高価な冷媒回収充填装置が必要となりますし、無理やり簡易的な物(真空ポンプとゲージマニホールドなど)で代用してこの作業を行おうとすると、どうしても冷媒を大気中に大量放出しなければならなくなってしまうというデメリットがあります。
それに対して、冷媒ガスの補充とは、カーエアコン内で現状不足している分の冷媒ガスを補充する事を言います。
冷媒ガスの補充だけであれば、大気放出することもなく、安価な道具と材料だけでDIYでもカーエアコンを適切な運転状態に戻してやることが可能です。
ただ、記事の最初の方でもお話したように、冷媒ガス補充でカーエアコンが直るケースというのは、カーエアコンの部品は壊れておらず、配管からの冷媒漏れの量も極めて少ない(年間数g程度)、つまり「単に冷媒ガスが足りていない状態」の場合に限られます。
一般的に、カーエアコン内に適切な量の冷媒ガスが入っているかどうかを確認する方法は、ゲージマニホールドという圧力計を使って、エアコン動作時の高圧圧力と低圧圧力が適正な範囲内かどうかを確認すれば分かります。
カーエアコンの適正な冷媒ガス圧力(参考値)
- エンジン始動直後のクールダウン開始時点
・高圧圧力;2~2.2MPa(20~22kgf/cm2)
・低圧圧力;0.1~0.3MPa(1~3kgf/cm2) - 安定時(エンジン回転数1500~2000rpmで一定)
・高圧圧力;1.3~1.6MPa(13~16kgf/cm2)
・低圧圧力;0.18~0.22MPa(1.8~2.2kgf/cm2)
※圧力測定時は、カーエアコンの設定温度を最低、風量は最大にセットすること
なお、上記の適正圧力を外れている場合は、以下のような故障が考えられます。
冷媒ガスの圧力から故障部位を判定する方法(参考例)
- 高圧、低圧とも低い
→冷媒漏れ - 高圧、低圧とも高い
→過充填(冷媒の入れすぎ) あるいは コンデンサの冷却不良(冷却ファンの回転不足とか) - 高圧が低く、低圧が高い
→コンプレッサ異常(内部のシール漏れなど) - 高圧が高く、低圧が低い
→キャピラリーチューブ(膨張弁)詰まり、ただし、詰まり具合がひどい具合は高圧圧力が異常に高いわけではないこともある(冷媒流量が少なくなるため)
ここまで分かってくると、カーエアコンの高圧圧力と低圧圧力が共に低い場合、冷媒ガスが不足しているのではないかと考えて良さそうだということが理解できるのではないかと思います。
安価な冷媒ガス量チェックツール
ゲージマニホールドはプロが使う道具なのですが、素人でも簡単に冷媒ガスの不足を確認することができる、「エアコンチェックキット(約2000円)」というものがあります。
このキットは、エアコン動作時の吹出口の温度や低圧側の冷媒圧力を測定することで、カーエアコンに適切な量の冷媒ガスが入っているかどうかを判定することが出来ます。
ゲージマニホールドは素人向けの安物でも5000円ぐらいはしますし、使い方を間違ってしまうと、冷媒ガスが一気に吹出してきたりもしてしまいますので、こういったチェックツールを使うのがおすすめです。
冷媒ガスチェックツールの具体的な使い方
ここからは、冷媒ガスチェックツールの具体的な使い方についてお話していきます。
停車中の低圧圧力を確認する
まずはじめに、停車中(エンジン停止から数時間後)の低圧圧力(平衝圧力)を測定していきます。
ボンネットを開き「L」のマークのあるエアコンバルブキャップを反時計回りに回して外していきましょう。
このバルブは単に汚れやサビ防止のために取り付けられているものですので、取り外してもガスが吹き出してくるわけではありません。
キャップを外したら、このようなワンタッチカプラが見えてきますので、そこに圧力チェックツールの先端部を押し付けていきます。
すると、下記のような感じでチェックツールの圧力を示す棒がピョコっと出てきます。
チェックツールの棒がしっかりと出てきて、現在の圧力は波線で示している部分を超えており、カーエアコンの中にはとりあえず冷媒ガスがちゃんと入っていること(量が適正かどうかまではこの段階では分からない)が分かります。
この段階(停車安定時)の圧力チェックで、棒がしっかりと出てこず「L」マークの領域の圧力しかない(平衝圧力が低すぎる)場合、カーエアコンの中には少ししか冷媒ガスが入っていない事が考えられます。
この場合は、カーエアコンから冷媒が漏れ出す量が多すぎることが想定でき、そのガス漏れ修理を行わない限り、冷媒を補充してもまたすぐに冷媒が抜けてエアコンが冷えなくなってしまいますので、ガス補充前にエアコン漏れ修理をする必要があるでしょう。
動作直後の低圧圧力を確認する
次は、車のエンジンをONし、エアコンを30秒間作動(最低温度、最大風量)させ、もう一度エンジンをOFFしてください。
その直後、もう一度先程の圧力チェッカーで低圧圧力を測定していきます。
すると今度は、圧力チェッカーが波線の領域(適切な低圧圧力の領域)を示していることが分かります。
この時点でざっくりとですが、エアコンの内部に封入されている冷媒量はほぼほぼ適切な量であることがわかります。
ちなみに、この段階(エアコン作動直後)でチェッカーの値が「L」を示していると、冷媒量が不足していることが考えられます。
エアコン作動時の吹出し温度を測定する
停車時とエアコン作動直後の圧力チェックが終わったら、次は付属の温度計を使ってエアコンの吹出し温度の測定を行なっていきます。
このような感じでエアコンから吹き出す風が温度計の測定部分に当たるように設置し、エアコンを作動させて3分ほど放置し、温度計が示す温度が安定してきたところの温度を記録します。
正常に動いているエアコンの場合、吹出し温度は10℃以下になっているはずですが、上記の場合、温度計は12℃を示していました。
エアコンの状態を判定する
後は、STEP2で測定したエアコンチェッカーの棒が示した値(波線のところ、低圧圧力を示す)とSTEP3で測定した吹出温度(約12℃)を説明書に付属の下記の表に当てはめ、現在のエアコンの状態を判定します。
その結果、今回の場合は「冷媒ガスがやや不足」ということになりました。
ここまで分かれば、あとはこちらの記事で紹介しているような感じで冷媒を補充してやれば、エアコンは以前のように冷たい風を吹き出すようになります。
逆に、冷媒ガス不足以外のことが原因だった場合は、冷媒ガスを補充しても無駄ですので、エアコン修理を業者に依頼するようにしてくださいね。
最後に一言
今回は、【補充ガスチャージ前に】車のエアコン冷媒量をDIYチェックする方法についてお話しました。
カーエアコンが効かない場合、すぐに冷媒ガス補充をするのではなく、このようなチェックツールを使って本当に冷媒ガスが少ないことが故障の原因かどうか確認してみてください。
ただ、カーエアコンの冷媒ガスは高圧なので自分で作業するのが不安だったりする場合は、プロにお願いするのがいいのではないかと思います。
是非参考にしてみてくださいね。
それでは!